

私自身、これまで長く保育の世界を歩んできました。ひと昔前は、職場の人間関係に悩む声を耳にすることもありました。それが原因で「こどもたちと向き合うことがしんどい」となってしまうのは、あまりにも悲しいことです。かつては若いせんせいが、早い段階で新しい道を選ぶことがありました。だからこそ、この法人を引っ張っていく立場になったとき、人間関係の再構築に真っ先に取り組もうと、強く感じ、職員みんなでさまざまな取り組みを考えました。
せっかくの夢を職場の人間関係で諦めてほしくない。まずは、何でもオープンに話せる人間関係づくりに取り組みました。その際私たちが最も大切にしたことは、経験豊富なベテランのせんせいから、若いせんせいへの歩み寄りです。トップダウン傾向だった業務の流れに、ボトムアップ型の意見もどんどん取り入れる!若いせんせいから上がってきた声をできる限り叶えていこう!まずは何でもやってみよう!という風土を、園全体でつくりあげようと考えました。
私たちの園では、役職や年齢の壁を取り払い、せんせい同士の絆を深めるためのさまざまな取り組みを実践しています。
休憩時間は、せんせいたちがいちばんリラックスできる時間であるべき。だから休憩室での過ごし方を大切にしています。役職に関係なく、園長も若いせんせいも、お茶を飲みお菓子をつまみながら、フラットに会話を楽しむ。休憩所は事務室の中なので、いつも管理職がいますが、若いせんせいたちも集まってきて、恋バナから他愛のない雑談までワイワイと盛り上がります。仕事以外の新しい一面を互いに知ることで、あたたかい空気感が生まれ、せんせいたちの幸せな笑顔や笑いが広がります。
忙しい毎日の中で、見落としがちな「感謝の気持ち」を、ハート型のカードに書いて贈り合う取り組みを行いました。これも若いせんせいからの提案で始まりました。 なかなか口に出して言えない、もしくは言う機会を逃すほど時間に追われることもありますが、「ありがとう」と感謝の気持ちを、カードに書いて相手に手渡します。メッセージをもらったせんせいは、みんな本当にうれしそう。中には自分のロッカーに大切に貼っているせんせいもいるほど。お互いを認め合う風土の大切な入り口になっています。今では、自然と「ありがとう」の言葉が飛び交う職場です。
各施設の枠を飛び出し、法人の全7拠点の職員が集まる研修を実施しています。過去には、1泊2日の「ディズニー流接遇・コミュニケーション研修」も企画し実行しました。 ただの研修ではなく、一流の接遇やコミュニケーション、サポートスタッフの配慮をみんなで学ぶ質の高い研修です。外部からプロの講師を招いた学びの場。別の園にいる同期のせんせいと久しぶりにコミュニケーションをとったり、せんせいとしての視野を広げたりする機会にもなり、そんな満たされた時間がまた明日からのこどもたちの保育へと活かされ、良い循環になります。
年に一度開催される、いわば「大人のガチ運動会」。7拠点対抗ということもあり、みんな本気で競い合います。これはチームの結束力を高める絶好の機会。せんせいだけでなく、お子さんや家族、さらには「恋人も連れてきていいよ!」というオープンなスタイル。仲間と一緒に楽しむ時間、仕事も遊びも同じくらい“本気”で取り組みます。
これらの取り組みを重ねた結果、職場の空気は劇的に変わりました。かつてのように人間関係の悩みを理由に退職していく若いせんせいは、今ではいなくなりました。今の園の雰囲気をどの職員に聞いても、「相談しやすい」「楽しい」という言葉が自然と挙がるようになりました。そして、このあたたかい園の空気は、日々の保育を通じてしっかりとこどもたち、そして保護者の方々にも伝わるものだと思っています。保護者の方からは「ほそだのせんせいたちの雰囲気、本当に素敵ですよね。せんせい同士が仲が良いのが伝わってきます」という嬉しい声も増えました。それはもちろん、こどもたちへの安心感にもつながっているはずです。
こどもの幸せを願うのがこの職業の使命ですが、そのためにはまず「せんせいの幸せ」が絶対になければいけません。人間関係やチーム力という土台がようやく整った今、これからはさらに一歩進んで、お互いに保育の「質」を高め合える関係を目指し、より素晴らしい環境をこどもたちに届けていきたいです。