自然とともに、
こどもたちは育ちます

保育の目標のひとつに、「自然を大切にするこどもを育てる」ことを掲げています。こどもたちには、身近な自然に出会い、ふれあいながら日常を過ごす中で、その豊かさや大切さを肌で感じてほしいと願っています。暑さが厳しい夏以外は、積極的に散歩や公園など戸外へ出かけています。2歳児の秋頃になると、「お山に行こう」と、自分たちで坂道をあがっていくようになります。神社近くの山道を歩く中で、こどもたちは木の穴をのぞいたり、葉っぱを拾ったり、蝶を追いかけたりと、自然の中から遊びを見つけ出します。特別な道具がなくても、自然にはこどもが育つきっかけがあふれています。一度出会ったものを覚えていて、次に同じ場所に行くと、前と同じ体験をしようとする姿も印象的です。自然との関わりが、日々の発見と遊びの連鎖を生み出しています。

「神社」は、地域と
自然をつなげてくれるところ。

私たちが神社へ通うようになったのは、園庭のように安心して遊べる自然を探していたことがきっかけ。保久良神社や岡本八幡神社など、地域にある神社にご協力をいただきながら、その環境との出会いを日々の保育に取り入れています。神社は単なる自然空間ではありません。参拝に来たお年寄りがこどもたちに声をかけてくれますし、アサギマダラという珍しい蝶を追っている学生さんに出会ったこともあります。こどもたちが地域の人々とつながる「出会いの場」でもあるのです。こどもたちは、こうした体験を家庭に持ち帰り「こんなことがあったよ!」と話し、ときには親たちをその場所へ案内することもあるようです。自然に触れ、地域の人と交わりながら育っていくこどもたち。その姿に、大人たちも心を癒されます。神社を起点に、こどもと自然、そして地域がゆるやかにつながり合う。都市部の保育施設ならではの取り組みではないでしょうか。

命と自然のつながりを知り、
それを大切に思えるように。

秋になると、神社の境内にはどんぐりが降るように落ちてきます。頭を手で守りながら歓声をあげるこどもたち。自然の中で生き生きと遊んでいます。最初は自然物を使った遊びとして楽しんでいましたが、あるときクマの保護活動に取り組んでいる方の話を聞く機会があり、それをきっかけにこどもたちの意識が変わりました。保護グマ「とよくん」の冬眠に備えてどんぐりをプレゼントすることになり、ご家族にも協力いただいて一緒に集めました。こどもたちは大量のどんぐりの中からクマの好物を選別できるように。この贈り物は、もう7年も続いています。アリが運ぶ虫や、クモの巣にかかる小さな蛾、花の蜜を吸うハチたちも、「怖い」「かわいそう」「危ない」と避けるのではなく、「命が育まれている場所に、自分たちは遊びに来させてもらっている」と伝えるようにしています。自然や地域との出会い、そして命の大切さを、心と身体で体感できる場所。地域の神社は、都市に暮らすこどもたちにとって貴重な存在です。