私たちの園では創設当初から「外遊び」を大切にしてきました。近くには田んぼや多井畑の里山、小川など、自然に恵まれた環境が広がっています。春と秋には週に1〜2回、1時間以上のお散歩に出かけることもあります。山道を歩き、畑の野菜を観察し、段差を越え斜面を登る。自然の中で、全身を使って遊ぶ毎日です。園庭では、年中裸足や草履で過ごします。足裏の刺激が脳を活性化させ、集中力や運動能力の向上にもつながります。遊びながら、育つ身体と心。ここには、教室では得られない学びがあります。遊びの中で、こどもたちは自然と助け合い、笑い合い、ときに困難を乗り越えていきます。その姿に、「遊びはこどもの大切な仕事」だと実感します。感性は、教えるものではなく、遊びの中で自然に育つもの。会話力だって、遊びながら育っていきます。
今の時代、タブレットで動画を観ながら、ゲームをしながら保育園にやってくるこどももいます。受け身の刺激に囲まれて過ごすことが、こどもたちにとって当たり前になりつつあります。だからこそ、何もない自然の中で「自分で遊びを見つける」経験は、とても貴重です。たとえば、草木に触れることでその匂いを感じたり、昆虫の動きをじっと観察したり、泥団子づくりにぴったりな土が感覚的にわかってきたり・・・。こどもたちは、五感をフルに使って、自分なりの遊びを創り出していきます。歩いているうちに、普段はあまり話さない子が自然とおしゃべりを始めることも。歩けば景色が変わる。発見がある。だからこそ、観察力、発見力、会話力など、部屋の中ではなかなか育ちにくい力が、自然の中では育っていくのです。自分で考え、自分で創造する。そんな大切な力を育むためにも、自然の中で過ごす保育には、大きな意味があると感じています。
卒園したこどもたちが中高生になって、この園に職場体験(トライやる・ウィーク)で戻ってくることがあります。「保育って楽しいかも」と思って来てくれているのなら、こんなに嬉しいことはありません。なかにはその体験がきっかけで、将来せんせいを目指すようになる子もいます。自分が育った場所に、今度は「せんせい」として戻ってくる。そんな素敵な循環が生まれています。私たちの園では、せんせいの心のケアも大事にしています。保育士同士の関係がうまくいかないと、こどもたちにも良くありません。年に数回のスタッフの面談を行い、一人ひとりの心のケアはもちろん、担当クラスなども含め働きやすさに配慮しています。自分らしく働ける環境を整えることが、こどもたちの笑顔にもつながります。卒園生が保護者になって自分のこどもを預けに来てくれる。そんなことも増えてきました。「あのときの楽しい思い出を、今度は自分のこどもにも」と言ってくれるとき、この仕事をしていて本当に良かったと思います。自然の中で、こどもと一緒に育つ保育。その楽しさとやりがいを、これからも次の世代へ伝えていきたいと思います。